遺留分について
父の遺言により,私の遺留分が侵害されている可能性があるのですが,侵害されていることがはっきりするまで遺留分減殺請求はしない方がよいでしょうか(遺留分減殺(侵害額)請求権の行使期間)。
(令和元年6月30日までの相続の場合)
遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が,相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈のあったことを知った時から1年で時効により消滅します(旧民法1042条前段)。また,相続開始時(通常は被相続人の死亡時)から10年を経過すると同じく消滅します。
他方,遺留分減殺請求権を行使した結果生じた目的物の返還請求権等は時効により消滅しません。
(令和元年7月1日以降の相続の場合)
民法改正により,遺留分侵害額請求権となり,遺留分権利者が,相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは,時効によって消滅します。
他方,遺留分侵害額請求権を行使した結果発生する債権に関しては,民法総則に従うことになるので,5年間は時効により消滅することは時効により消滅することはありません(新民法166条1項1号)。
(結論)
そうだとすれば,あなたが遺言により遺留分を侵害されているか不明な場合でも,その可能性がある場合には,念のため,遺留分減殺(侵害額)請求の意思を内容証明郵便等で受贈者等に伝えておいた方がよいでしょう。民法改正前であれば,遺留分減殺請求をした後の物件的請求等は時効により消滅しないし,民法改正後であっても,一旦侵害額の請求をしておけば,少なくとも5年間は時効により消滅しないことにことになります。したがって,調停を申し立てるか,訴訟を提起するかなどはその上でゆっくりと検討しても不都合はありません。
